確率的経験表現に基づくヒューマンロボットインタラクションシステム:PEXIS

研究の背景と目的

PEXISの機能

• 経験からの学習
  ユーザからロボットに与えられた指令や，ロボットが得たセンサ入力などを経験として蓄え，それらのプリミティブな情報間に存在する因果関係を学習し，Bayesian Network によって出力する機能を持っている．この機能により，ユーザが希望する行動を教示しているうちに，徐々に自律的な行動を獲得する事が可能になる．（参考文献[7][9]）

• ユーザ個人への適応
  ロボットに対する指示の出し方や，獲得して欲しい行動は，個人によって異なる．PEXISはロボットを使用するユーザに適切なインタフェースを提供するために，経験データと矛盾しないように Bayesian Network モデルを洗練させる．（参考文献[6][10]）

• 質問，提案の生成
  PEXISは，蓄積した経験から自律取るべき行動を選択したり，ユーザの質問に対して適切な応答を用意する．これらの選択や判断は経験を統計的に処理した Bayesian Network で行なわれるため，「確信度」と呼ばれる確率値で表現される．この確信度が低い場合には，なるべく確信度が高くなるように対話のプラニングを行ない，質問や提案などを生成する．（参考文献[5][6]）

• 自然言語の利用
  ユーザは音声認識や，キーボードからの入力など，自然言語を用いてロボットと対話を行なう事ができる．また，ロボットが保持していない特殊な言い回しなど，新しく語彙を獲得，学習する事ができる．（参考文献[6]）

PEXIS を使用しているロボット達

上半身人間型ロボット:H4	移動ロボット:Hyper Mouse
仮想環境の移動ロボット	フレンドリーアーティファクト

参考文献

1. Tetsunari Inamura, Masayuki Inaba and Hirochika Inoue.
   "PEXIS : Probabilistic Experience Representation Based Adaptive Interaction System for Personal Robots,"
   Systems and Computers in Japan, 2004, (印刷中)

2. 稲邑 哲也
   "ロボティクスにおけるベイジアンネットの応用−実世界で活動するロボットのための経験的自律行動モデル−"，（解説論文）
   人工知能学会誌，Vol.17, No.5, pp.546--552, 2002．

3. 稲邑 哲也，稲葉 雅幸，井上 博允．
   "PEXIS:統計的経験表現に基づくパーソナルロボットとの適応的インタラクションシステム"，
   電子情報通信学会誌，Vol.J84-D-I，No.6, pp.867--877, 2001．

4. 稲邑 哲也，稲葉 雅幸，井上 博允．
   "ユーザとの対話に基づく段階的な行動決定モデルの獲得"，
   日本ロボット学会誌，Vol.19, No.8, pp.983--990, 2001．

5. 稲邑 哲也，岡部 真人，稲葉 雅幸，井上 博允．"タスク達成の確信度に基づくユーザへの質問確認行動の生成−ヒューマンロボットインタラクションシステムPEXISの機能その４−"，ロボティクス・メカトロニクス講演会'00 講演論文集，pp.2A1-76-112, 2000.

6. 稲邑 哲也，稲葉 雅幸，井上 博允．"個人に適応した語彙を獲得するロボットとの自然言語対話処理−ヒューマンロボットインタラクションシステムPEXISの機能その３−"，第5回ロボティクスシンポジア予稿集，pp.146--151, 2000.

7. Tetsunari Inamura, Masayuki Inaba and Hirochika Inoue. "Acquisition of Probabilistic Behavior Decision Model based on the Interactive Teaching Method" In Proc. of 1999 Int. Conf. on Advanced Robotics (99 ICAR). pp.523--528, 1999,

8. 稲邑 哲也，稲葉 雅幸，井上 博允．"確率的経験表現に基づくヒューマンロボットインタラクションシステム:PEXIS"，第17回日本ロボット学会学術講演会予稿集，pp.1071--1072, 1999.

9. 稲邑 哲也，稲葉 雅幸，井上 博允．"行動決定の確信度を利用した重み付け経験蓄積法に基づく自律行動の獲得 - ヒューマンロボットインタラクションシステムPEXISの機能その１ -"，第17回日本ロボット学会学術講演会予稿集，pp.1009--1010. 1999.

10. 稲邑 哲也，稲葉 雅幸，井上 博允．"Bayesian NetworkとGAを用いた対話経験の内省に基づく適応的インタフェースの実現 - ヒューマンロボットインタラクションシステムPEXISの機能その２ -"，第17回日本ロボット学会学術講演会予稿集，pp.1011--1012. 1999.

11. 中 健，稲邑 哲也，稲葉 雅幸, 井上 博允. "対話機能をもつ視覚移動ロボットによる配達サービス行動の実現"，ロボティクス・メカトロニクス講演会'99 講演論文集. pp.2P2-23-014

12. 星野 由紀子，宮本 正城，稲邑 哲也，稲葉 雅幸, 井上 博允. "卓上全身型ロボットにおける状況認知型の視聴触覚対話行動制御システムの開発"，ロボティクス・メカトロニクス講演会'99 講演論文集. pp.2A1-76-115